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事故調査報告書

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2003年2月19日  安全委員会 委員長  阪田茂男
               事故担当 小浜真哉
1.事故の概
1.1 概要
 2002年11月4日朝9:00時頃、2002佐賀インターナショナルバルーンフェスタにおいて、競技中の気球が嘉瀬川河川敷でハードコンタクトを起こした際、シリンダのコネクタ部が破損し生ガスがリーク、バスケットが炎に包まれた。乗員は直後に脱出。その後、無人の機体は炎上しながら上昇し、空中で爆発を起こし、近くの水路に落下した。
 乗員は軽い打撲と軽い火傷を負った。会場の観客、付近の住民に、負傷者は出なかった。一部落下物が、付近のビニールハウスに損傷を与えた。

1.2 調査の経過
 安全委員会事故担当が、調査を実施した。
 関係者へのインタビュー、オブザーバーが携行していたGPSのデータ分析、事故を映していたビデオ映像の分析を行った。


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2.飛行の状況

2.1 乗員
   PIC:53歳 男性、パイロット暦14年、総飛行時間588時間。
   パッセンジャー:23歳 男性、 大会オブザーバー、初フライト。


2.2 機体
 体積:2190m3、FAIクラス:AX-7、総飛行時間70時間、総飛行回数41回。
 球皮:Thunder&Colt A-77
 バーナー:CAMERON シロッコ(ダブル)
 バスケット:CAMERON
 シリンダ:関東高圧容器製作所、搭載本数 4本


2.3 気象状況
 地上気温:8℃
 天候:曇
 降水確率:20%
 雲底:800m(ブリーフィングデータより)
 予測風速(ブリーフィングデータより)
at 09:00
Surface:12knots NW, 925hpa:30knots NW, 850hpa:30knots NW


2.4 被害の状況
 乗員 パイロットは顔面と頭部に軽い火傷、オブザーバーは打撲、軽傷。
 機体 全損状態。
    球皮:映像では、約半分が消失している。所有者の倉庫に保管されており、事故調査委による詳細な検証はできていない。
    バーナー:金属部は原形を保っている。ホースのゴムは消失し、金属の網が残っている。
    バスケット:底板部は残っている。側面の藤は消失。
 対人 被害なし
 対物 落下物がビニールハウスにいくつか穴を開けた。


2.5 時間の経緯と飛行の状況
2.5.1 当日の競技は、PDG(パイロット・ディクレアド・ゴール)、FIN(フライ・イン)、GBM(ゴードン・ベネット・メモリアル)、JDG(ジャッジ・ディクレアド・ゴール)の4タスクであった。
2.5.2 当該機は、8:38に、小城町船田の道路上(1048/8206)より離陸した。
    20kgシリンダを4本搭載し、推定燃料重量は80kgである。
    燃料ホースの接続形態は、バーナーからの2本のホースを直接シリンダのコネクタにつなぐもので、4本のシリンダをすべてつなぐマニホールドは使用していない。
    乗員は、PICとオブザーバーの2名であり、推定離陸重量は450kgである。

2.5.3 8:53頃、牛津町乙柳の田(1311/8106付近)に、PDGのマーカーを投下し、その後、FINのゴールである嘉瀬川河川敷(1621/7920)に向け高度を上げる。
2.5.4 8:57頃、約2500ftから、河川敷に向け、降下を開始する。
2.5.5 8:59頃(接地約70秒前)、高度1000〜1200ftでFINマーカーを投下。
    その後、球皮を変形させながら降下を続ける。

2.5.6 接地約30秒前、高度約300ftでバーナーに点火。
    (約86秒前にビデオ撮影が始まってからここまで、バーナーはONされていない。)

2.5.7 接地約5秒前、バーナーはONのまま、高度約100ftでGBMマーカーを投下。
2.5.8 接地約2秒前、気球半個分ほどの高さで、バーナーをOFF。
    その後、PICがオブザーバーをしゃがませ、PIC自身も上体をかがめる。

2.5.9 大会公式時計で9時00分00秒に、嘉瀬川ランチサイトEフィールド内(1620/7914付近)に接地する。
    接地時の速度は、垂直方向:約7m/s、水平方向は、0ではないが判定不能。
    オブザーバー携帯のGPSによる飛行経路を、fig-1に示す。

2.5.10 接地直後(約0.1秒後)に、シリンダバルブのコネクタ部が折れ、バスケット上縁付近より外に向けて生ガスが噴出する。(fig-2に、ビデオより抜き出した、その瞬間の映像を示す。バスケット右横に白い煙が見える。)
    その後、バスケットは横に倒れ、降りてきた球皮がバスケットを覆う。
    PICは、自身の背後でガスが噴出しているのに気づき、バルブを閉めようとする。

2.5.11 接地後約3秒後、球皮がほぼ横倒しになり、バスケットが外から見えるようになる。
    この直前に、噴出しているガスに火が付く。パイロットバーナーの火が引火したと考えられる。

2.5.12 PICは、バルブの閉止を断念、脱出を決意し、まず自身がバスケットから出、接地後約6秒後にオブザーバーを引きずり出す。バスケットはその後乗員の横を風に引きずられて通過する。
2.5.13 接地後約8秒後、無人となった機体は、バスケット付近から炎を噴出しながら再浮上する。
    その後、風に流されながら南東方向へ上昇してゆく。

2.5.14 接地後1分48秒後、高度500〜800ftでシリンダの1本が爆発する。
    その際にシリンダは4本ともバスケットから脱落したと思われる。

2.5.15 接地から3分19秒後、機体は、接地点から南東に1.3km離れたクリーク(1702/7854)に落下する。

2.6 その他
 機体、シリンダ等の落下位置を、fig-3に示す。
 破裂したシリンダは、1本であった。
 破裂したシリンダのバルブは、コネクタ接続部で折れていた。また、破断面は煤等で汚れていなかった。
 破断したコネクタ接続部が、河川敷近くのビニールハウスで発見されている。このコネクタの破断面は煤で汚れていなかった。
 もう1つのコネクタは、機体の最終落下地点付近で回収されている。このコネクタの破断面は煤で真っ黒になっていた。
 fig-3の3本目および4本目のシリンダは、バルブにコネクタがついたまま発見されている。
 これらより、破裂したシリンダは、バーナーに接続された使用中のシリンダであり、コネクタ部は、破裂時または破裂後に破断したと考えられる。

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3.分析

3.1 GPSデータの分析
3.1.1 GPSデータの回収
 オブザーバーが携行していたGPSは回収でき、データがアップロードできたが、PICのGPSは回収できなかった。
3.1.2 接地時刻の特定
 大会公式時計とGPS時計のシンクロナイズができなかったため、GPSデータ上での接地タイミングを特定できなかった。そこで、接地時刻付近で最も低い高度を記録したタイミングを、接地タイミングとした。
3.1.3 データ精度
 接地前の2点が、南東方向に50〜60m移動しており、これはビデオ映像と合致しない。(fig-1の円内)
 しかし、航跡の大まかな形を見る上では、大きな問題はないと判断する。

3.2 地表への接地の原因
 直接の原因は、PICが急降下を行った際に、降下を制止できなかったことによる。
 降下を制止できなかった理由として、PICは、乱気流があったとコメントしているが、乱気流の存在、影響は、判定できなかった。
 また、接地は離陸から約22分後に発生しており、もしシリンダ1本のみを使用して飛行していた場合には、接地前に片方のシリンダが燃料切れを起こし、制動力が不足していた可能性がある。しかし乗員は、接地前の各シリンダの燃料残量を掌握していたかどうかについて、記憶があいまいであり、確認できなかった。

3.3 接地時の燃料噴出の原因
3.3.1 バルブ、コネクタの形状
 fig-4に、コネクタの形状(断面図)を示す。
 今回搭載されていたシリンダは、a)の 3/8PNT タイプのコネクタが付いてい、コネクタのエンド部分(図で、"3/8PNTオス"という説明書きの矢印の先当り)で破断していた。
 破断の原因が、接地時の衝撃のみによるものかどうかは不明であるが、ホースが接続された2つのバルブの内、片方のみが破断していることから、接地時に、このコネクタに、何らかの外部からの力が加わったために破断した、と推測される。
 外部の力が加わった原因は、接地時に、乗員の体または搭載物が衝突したと推測されるが、設置時の状況について乗員は記憶していなかった。
3.3.2 バルブの強度試験
 事故機と同形のバルブを用いて、どのくらいの荷重を掛けると破断するか、確認試験を実施した。
 その結果、5回の試験の平均で、静荷重による125N・mの曲げモーメントにより破断した。
これは、fig-4aのコネクタ端部に、約150kgの静荷重を掛けたことと同等である。
衝撃荷重については試験を実施していない。


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4.提言

 安全委員会は、日本気球連盟に対し、熱気球パイロットに、下記の安全指導を徹底することを提言する。

 A.
バーナー、燃料系統は、Oリングやコネクタ等、構造的な弱点があることを認識した上で、機材の選定、日頃の取扱い、定期的な点検保守を実施すること。

 B.
燃料系統のセッティングに対し、飛行中に外部から不要な力が掛からないよう留意すること。
 B-1.
ホースに無理な力がかかるような配管はしない。
 B-2.
シリンダーの上部にホースやアクメコネクターに接触するように物を置かない。
 B-3.
ホースにかかるようにカバンなどを掛けたりしない。
 B-4.
搭乗者や搭載物がホースやアクメコネクターに接触しないように配管する。

 C.
地上や構造物等への激しい接触/衝突が回避できないときには、メインバーナーは勿論、パイロットバーナーも消火すること。

 D.
不要な急降下はしないこと。特に低空での急降下は厳禁。

 また、今後、熱気球競技規則に、上昇、下降の速度制限を設定するよう提言する。

 さらに、GPS等、飛行情報記録装置の搭載化を検討するよう提言する。

 −−−−−−−− 以上 −−−−−−−−


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